技術用語(金属用語解説・プラスチック用語解説)

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加工硬化/work hardening

「ひずみ硬化」ともいう。鉛など特異な例を除き、金属に応力を与えると結晶のすべりが生じ、そのすべり面に対しての抵抗がだんだん増してくる。そしてその抵抗がある程度大きくなると他の面に順次移っていく(塑性変形)。冷間加工により変形が進めば進むほど抵抗が大きくなり金属は硬さを増していくが、これを加工硬化という。伸銅品、ステンレス板やアルミの非熱処理合金板などはこの加工硬化の程度(加工率)によって質別の区分がされている。
例)伸銅品1/4H、1/2H、3/4H、H、アルミニウム合金H1n加工硬化のみのもの、オーステナイト系ステンレス、SUS301、1/4H、1/2H、3/4H、Hなど
加工硬化係数(n値)
絞り加工性の目安にもなる特性値で、「n値」とも呼ばれる。降伏点以上の塑性域における応力σとひずみεとの関係(曲線)をσ=Cεnで近似させた時の指数nのことである。加工硬化係数(n値)が大きいほど、局部収縮発生までの伸びが大きいため絞り性が良くなる。一般にn値は、0.15~0.45程度であるが、下記の代表例もある。 アルミニウム(軟)0.27 黄銅2種65/35(軟)0.55 18-8ステンレス 0.50

加工率%

「冷間加工率」ともいう。加工硬化はその加工の程度によって硬さが変わってくる。これを利用してJISでは伸銅品の機械的性質の違いを規定している。加工率は通常加工前の材料の断面積Aoと加工後の断面積Aの差を加工前の材料の断面積Aoで割った百分率(%)で表す(加工率=(Ao-A)/Ao×100%)。また、板の場合は、幅はほとんど変わらないので断面積のかわりに板厚及びその差で算出することができる。一般に加工率が大きくなれば、硬さと引張り強さは増し、伸びは低下する。
硬さ/hardness
「一物体の硬さとは、これを他の物体をもって押しつけるとき、その物体の変形に対する抵抗力の大きさをもって規定する」との定義であるが、実際には「ブリネル硬さ(HB)」「ショア硬さ(HS)」「ロックウェルC硬さ(HRC)」「ビッカース硬さ(HV)」の値で比較して硬さを知ることになる。一般に硬い材料は強さや耐摩耗性が大きく、伸びや絞りが小さい。また硬さは引張強さと密接に関連している。HB、HS、HRC、HVの値の相関はかたさ換算表で確認。
硬さ試験/hardness test
材料の機械的性質の中で硬さを調べる試験で、押込み硬さ(HBブリネル硬さ、HVビッカース硬さ、HRロックウェル硬さなど)、反発硬さ(HSショア硬さ)の2種類に区分けされる。
ガスケット
シリンダーヘッドとシリンダーの間にはさむ薄い型抜き板のことで気密性を高めるパーツ。

機械的性質
材料の機械的な特性、つまり弾性、非弾性反応、応力と歪み、弾性率、引張強さ、疲れ限、硬さなどのように力が加えられた場合に発生する材料性質。
矯正
板材の平坦度や棒材の真直度を改善するために行う修正処理で、テンションレベラー、ローラレベリングによる加圧と、ストレッチャーによる引張り矯正などがあるが、場合により併用されることもある。

クラック
材料の外面又は、その全厚さを貫通しているか又は貫通していない割れ目。製品の表面から内部に広がったキ裂のこと。
クラッド材/clad plate
強さを増したり耐食性を向上させたりするために、ある金属に他の金属を加圧接着や圧延によって合わせ板にしたもので、被覆材の一種である。ジュラルミンに純アルミを合せたアルクラッドなどがある。
クリア
耐候性を増す目的でアルマイトの上に施される透明な塗装。
クリープ強さ/creep strength
応力で少しずつ伸びていく現象のこと。高温強度を示す値。クリープとは高温で長時間の荷重のもとでは、常温時よりはるかに小さい。クリープ強さは一定温度においてのクリープ速度(1%/10万時間)を生じる応力のことである。

ケーク/cake

スラブ」ともいう。板、条製造用の厚い板状になった鋳塊のことをいい、主に円柱形の鋳塊(=「ビレット」)と区別されている。
結晶粒/grain *結晶粒度/grain size
金属は多くの微少の結晶からできている多結晶体であり、その結晶の一つ一つを結晶粒という。この結晶粒の境を結晶粒界と言い、不純物が集まりやすく「粒界腐食」など腐食されやすい場所である。またこの結晶粒の大きさを「結晶粒度」といい、曲げ加工時の肌荒れの差となってあらわれ、黄銅板ではJISで区分されている。結晶粒は「再結晶温度」以上に加熱すると拡大し、同じ材質でも熱処理の方法により結晶粒度は変わってくる。一般に「焼入れ」をすると細かくなり「焼なまし」をすると大きくなる。金属の結晶粒の大きさは0.01ミリ~0.1ミリぐらいである。

小板定尺
銅、真中は巾365ミリ×長さ1200ミリが主で、りん青銅、洋白は巾180ミリ×長さ1200ミリ、アルミは巾400ミリ×長さ1200ミリの板のことを小板と呼んでいる。尚ステンレスには小板定尺はない。
コイルカット品
ステンレス業界ではメーカーが供給する定尺板を「一級シート」又は「メーカー定尺」と言い、流通コイルセンターのコイルカット品を、それと区別する意味でCC板(コイルカット)と呼んできた。しかし、いずれもコイルから切断して定尺板を製造するため、特に区別することも少なくなってきている。またステンレスの薄板定尺品を総称してCC(シーシー)と呼んでいることもある。
光輝焼鈍(BA)/bright annealing
「光輝焼なまし」ともいう。光沢のある金属表面を保つために、表面の酸化脱炭を防ぎ、還元または中性ガスあるいは真空中で加熱し、焼きなましをすることを光輝焼鈍という。真中管やステンレス板のBA材、細棒3φ~9φはこの光沢を利用し、そのまま商品化されている。

硬質アルマイト/hard anodized aluminium

アルミニウム及びアルミニウム合金の表面処理で、陽極酸化皮膜(アルマイト)処理のうち、硬度(HV)350以上のものを硬質アルマイトと呼んでいる。耐摩耗性、耐食性にすぐれ、耐電圧、含油性をもっている。皮膜の形成法は硫酸浴をベースとして10℃以下の低温で陽極酸化する低温法と、有機酸に硫酸を添加した混酸を用いて常温付近で電解する常温法とがある。(参照「アルマイト」)
高周波抵抗溶接
コンタクト(接触子)を介して200Kc~2Mcの高周波電流を直接母材に流し、母材を部分的に加熱、加圧して接合する抵抗溶接の一種である。とくにパイプの溶接に適しており、ステンレスの化粧管もこの方法で中径管まで作られていることが多い。非常に高速で溶接できる利点がある。
孔食/pitting corrosion
すきま腐食の一種であり、「点食」ともいう。アルミやステンレスの不動態皮膜面が、有機物などの異物が接触している箇所や塩素イオンの溶液中で、主に中性付近の塩素イオンが吸着して部分的に皮膜が破壊され、内部に浸透する腐食である。
降伏点/yield point
引張試験の途中で応力(引張荷重)が急に低くなり、その後応力が大きくならないで伸びが進むという現象が起こる。その転機の応力Wを試験前の材料片の断面積Aoで割った値を降伏点という。降伏点までは、材料の弾性域、降伏点を超えた領域は材料の塑性域であり、スプリングバック発生の目安ともなる。
極厚板
板厚が50ミリを超える板のことをいうが、厳密な定義はない。
極薄板
板厚が0.3ミリ~0.5ミリの板のことをいうが、厳密な定義はない。
5'×10'板(ゴトウ)
巾5尺×長さ10尺からとって、ゴトウ板という。アルミ板では1525ミリ×3050ミリの板。

固溶化熱処理

合金において、一般に温度が高くなるほど基本金属に加える合金元素は溶け込みやすくなる。したがって、合金固有の温度に加熱した後急冷すると、低温では析出するはずの合金元素が固溶(溶け込み)したままとなる。これを固溶化処理といい、オーステナイト系ステンレスではJISでも固溶化熱処理したもので機械的性質を決めている。また非鉄金属(主にアルミニウム合金)では「溶体化処理」もしくは、「焼き入れ処理」とも言う。 固溶体処理加熱温度: ステンレス1,000℃~1,100℃前 アルミニウム合金 450℃~550℃前後